虹色群像

 私は、群像劇が好きだ。


 昔からさまざまな小説や漫画を読んできたけれど、特に印象に残ったものにはひとつの共通点がある。もちろん例外もあるけれど、それらはほとんど全部、「群像劇」だった。
 「三国志」に傾倒したときがあった。何十何百という英傑たちが、それぞれの夢を抱いて大陸を駆け巡る物語。
 「ぼくらの七日間戦争」にも夢中になった。さまざまな個性と一芸を持った若者たちが、理不尽な大人たちに戦いを挑む物語。
 筒井康隆の作品を読み耽ったこともある。いまもって最高傑作と信じて疑わないのは、さまざまな心の傷を抱く文具たちによる未知の惑星への決死行を描いた「虚航船団」である。
 「バトル・ロワイアル」も忘れてはならない。凄惨な殺し合いばかりがクローズアップされがちな作品ではあるが、42人の生徒たちが戦場で抱いたそれぞれの思い、人間ドラマとしての側面は評価にあたって欠かせない。映画や漫画でも決して悪くはないが、機会があればぜひとも原作の小説をお読みいただくようお勧めしたい。


 ここに、ひとつの群像劇がある。


 技芸に優れた者、癒しをもたらす者、そして強い意志の力光る者。普段はそれぞれの場所で、しかし決してバラバラではなく互いに影響しあいながら活動を続ける。そしてひとたび一堂に集えば、その圧倒的な迫力で空間を支配し、観衆に熱狂をもたらす。さまざまな個性を持つメンバーたちがつくり上げる、とても長い長い物語。
 1997年、あるテレビ番組から発生して、一時は国民的センセーションを巻き起こした物語。それから幾年の月日が流れても、連綿と続くこの世界を楽しむ人々はなお少なくない。


 物語の名前は、「ハロー!プロジェクト」。
 しばらくのあいだ、この群像劇を見守ってみようかと思う。